永井均『ウィトゲンシュタインの誤診 『青色本』を掘り崩す』を読みました。
タイトルからウィトゲンシュタインを批判した書だと思い、すごい挑戦だなと思いました。
しかし、批判というよりも、『青色本』を自分なりに訳して分析した本です。
「掘り崩す」というのは強すぎて、「『青色本』に寄り添って」という感じでしょうか。
文庫版の『青色本』の訳はよくなくて、訳者自身が理解してないのではないかと思わせます。
それに対して、この本の訳は非常に分りやすかったです。
内容的には、ウィトゲンシュタインの「独我論」に関する記述を分析して、批判したり評価したりしています。
著者は『青色本』は、ウィトゲンシュタインの症状である「独我論」を自ら診察した本だと捉えています。
僕は、『青色本』は、論理的に何かを主張するために書かれたのではないと思っていましたので、その点では著者と同意見です。
ウィトゲンシュタインは、この『青色本』では「単純な理解」を拒絶しているようです。
僕は、ウィトゲンシュタインは、この本で読者とコミュニケーションをしたいのだと思いました。
しかし、この『〜誤診』では、やはりどこか論理的に「理解」しようとしている様にも見えます。
永井氏の分析は、的を射ていて鋭いのですが、そもそもウィトゲンシュタインがこの本を「理解」してもらいたかったのかは疑問だという気もします。
しかし、「分析」も一つのコミュニケーションだと捉えれば、この本もウィトゲンシュタインは気に入ったかもしれません。
ウィトゲンシュタインがこの本を読んだら、苦笑しながら喜んだかもしれません。これはこれで一つのコミュニケーションになっているので。
2013年4月29日月曜日
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