中島梓著『コミュニケーション不全症候群』を読みました。
1991年という、早い時期に「おタク」について論じた本です。
著者自身、自分もおタク的要素があるがゆえに、現代のコミュニケーション不全の状況に危惧を感じ、警鐘を鳴らすために書いたといっています。
「おタク」、男性同性愛を描いたマンガを愛好する少女、摂食障害、ダイエット症候群、などの現代の病は、その根底に「コミュニケーション不全症候群」という病があるといいます。
それは、過密な空間に生物が押込められると他者を他者として受け止められない、モノのようにしか見られないというところから発したといいます。
そして彼らは、いつまでも子どものままでいて、他人に承認されることを一方的にのぞむ存在であるといいます。
この本は「おタク」現象を極めて危険なものだという立場に立って書かれています。将来おタクたちが40代、50代になったときにどうなるのかと心配しています。
では、いまおタク第一世代が50代になったときどうなっているでしょうか。
一般的にいって、オタクはかつてほどの差別の対象にはなっていないように思われます。
宮崎駿が文化功労者に選ばれ、エヴァンゲリオンは現在でもヒットを飛ばしています。
しかし、その前にオウム真理教事件などがあり、オタク自身も変革を何度か迫られたという事情もあるでしょう。
オタクが一方的に危険だとはいえないけれども、この本の警告には傾聴に値するものがあったと思います。
最後に著者が処方箋というということで出したのが「時間」という観念を導入するということでした。「時間」が動いているということを意識したとき、コミュニケーションは作動するといいます。
僕はそれを読んで、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版: Q」を思い出しました。オタクである自分を引き受けつつ、どのようにそれを乗り越えるかをテーマにしている庵野秀明さんの最新のテーマは「時間は動いている」というものだと思ったからです。
コミュニケーション不全症候群の問題は、いくつかの改善を経つつ、今でもある意味、大きなテーマとして存在しているともいえるのではないでしょうか。
2012年12月9日日曜日
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