2010年11月20日土曜日


佐々木中さんの『切りとれ、あの祈る手を』という本を読みました。
タイトルはツェランの詩からの引用です。

著者はあるとき情報を一切遮断して、読書に専念したそうです。そこで、時流に流される評論家を徹底的に批判します。

現在の流行を追いませんので、過去の歴史に基づいて議論をします。

自分が読書を専らしてきただけあって、読むということを特別なことだと考えます。
ルターやムハンマドらを例に、読むことが革命につながるという独自の理論を展開します。

同時代の流行の思想を閉ざしただけあって、他の人にはない著者独特の世界観と理論を持っていて引き込まれてしまう迫力があります。

最後に、生物種の平均寿命が400万年で、人類が誕生してから20万年なのであと380万年あるのだから人類がすぐに終わるなんて考えるのはおかしいと主張します。

大きなスケールで書かれて、力強く書かれているので視野が大きくなるような気がします。

しかし、敢えて不満をいわせてもらえるならば、これだけ同時代人の影響を排しているなら、同時代人への批判をそこまで厳しくしなくてもいいのではないかと思いました。逆に、批判が感情的に強ければ強いほど、本当は同時代人を強く意識しているのかなと思えてしまいます。本当に同時代の批評に意味がないのであれば、単に無視すればいいだけで、時間が経れば忘れ去られるはずではないのでしょうか。

この本は大変面白く、知的にも感情的にも刺激されましたが、僕の立場としては現代の「ちゃんとした」批評家は支持したいというものです。
単なる流行を追うだけの人は批判されてしかるべきだと思いますが、ちゃんと考えているひともいると思っています。もちろんどんな人も完璧ではありませんが。

同時代の批評家をすべて批判するとなると、僕とは立場は違います。

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