2012年8月9日木曜日

『1Q84』


村上春樹著『1Q84 BOOK1<4月-6月>』『1Q84 BOOK2<7月-9月>』『1Q84 BOOK3<10月-12月>』を読み終わりました。

村上春樹。この毀誉褒貶の激しい作家の作品を初めて読みました。

なるほど、毀誉褒貶の激しさが分った気がします。

とにかくストーリーを人を引きつける。娯楽作品として超一流です。

文章は奇麗ですが、ちょっと気取ったところがあって、気に食わない人もいるでしょう。

問題なのは、出てくる登場人物、例えば「金持ち」とか「悪党」とかの描写があまりにも「マンガ的」なのです。そんな奴はいないよ、と突っ込まれるところでしょう。

ですから、自らハイカルチャーと思っている人からは、彼の作品はあくまでもサブカルチャーだと差別されてしまいます。
しかし、それを承知で見ればよくできている。

僕は他に、大江健三郎、宮崎駿に同じにおいを感じます。三人とも「素朴な左翼的」なところがあって、その素朴さにハイカルチャーと思っている人は突っ込みを入れます。ところが、そのような文脈を知らない海外では高い評価を得ています。原発反対などの声明をだすと、その国際的な知名度を頼って今度は持ち上げる人がでてくる。同じ構造です。

僕は、サブカルチャーと認識した上で評価するという大塚英志氏の立場に共鳴します。
単にサブカルとして見下すのでもなく、しかしハイカルチャーとは一線を画す。

物語自体は、これはこれで引きつけられました。しかし、パラレルワールドに入ったから変わったのがどこまでかわかりづらい。教団「さきがけ」がなければふかえりもいないはずではないか、とか。
1984年のノスタルジーをもっと出してもらっていいのではないかとも思いました。また、教団「さきがけ」の中の様子をもっと描いていても面白かったのではないか。リトルピープルや空気さなぎとは何なのか。その謎を解いて欲しかったし、それがいかなるものの隠喩なのかも知りたかったです。

しかし、最後は心温まるラストで、よい読後感でした。
いろいろ注文をつけましたが、面白かったです。

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