2015年6月20日土曜日

「信頼と信用 "健全"な民主主義とはどういうことか?」


今日は、朝日カルチャーセンター新宿校「信頼と信用 ”健全”な民主主義とはどういうことか?」講師、宮台真司先生、堀内進之介先生にいってきました。

まず、堀内先生が約30分間講義を行って、その後対談になります。

堀内先生の講義は、

人間の「理性」と「感情」について考察します。

現在、人間の「感情」についての議論が少し盛んになってきてるようです。
人間は、理性よりもむしろ感情で動く。この考えは、現在のジョナサン・ハイトから古くはデイヴィット・ヒュームにまで遡ります。

堀内先生自身、批判理論を勉強してきているので、批判理論では「理性」を批判するのがあたりまえなので、この考えは当然と考えます。

しかし、人間社会をある理想に近づけるためには、ある種人間の感情的な部分に訴えかけることが必要である。そのためのノウハウは、広告代理店などに多く蓄積されている。
一方、そのような感情的動員のノウハウを安易に使うのは危険であり、そのことの危惧も表明されていました。

宮台先生は、現在、共同体が崩壊して、人々が不安にかられ、人々の感情の劣化が進んでいるとします。その中で、人々の感情の劣化に抗うためにどうしたらいいかを考えなければいけないと考えます。

人類は約8万年前にアフリカを出て、4万年前に言語を獲得して、書き言葉を使うようになったのはたかだか2500年前にすぎないといいます。

言語以前は人々は、理性はなかった。言語の初期には人は主にうたで人々を感染させていたといいます。
そして、神官しか使わなかった「文字」をベースにして、「理性的言語」を初めて使ったのがプラトンだといいます。
「理性」すなわち「言語」を使うようになったのはあまりにも最近。そのことによって人々のコミュニケーションのリーチがのびましたが、感情は衰えました。

しかし、これから先も「言語」の使用のない社会はおとずれない。その中でどうやっていくか。

最近の大学の講義でサブカルチャーを教えているが、若い人達の感情の劣化はすごく進んでいるといいます。
若い人達は、「ことば」にならないものを怖れているのではないかといいます。

堀内先生は、感情の劣化に抗するのには賛成だが、直情的に感情に訴えるのも危険だといいます。
感情に訴えるには、反省的な視点が必要だといいます。

宮台先生。感情の劣化に当て込んだ戦略は昔からとられていた。例えば小泉内閣の時の竹中さんは、IQが低いが、弱者だという認識がない層を「B層」とよんで、広告代理店的動員をかけました。
宮台先生は、その手の内を明かす「情報開示」が大事だといいます。そのことを知れば、皆嫌悪感を持つだろうといいます。

一方で、自分より幸せな人のことを妬んで攻撃する様な連中を自己陶冶させるのは無理だともいいます。

堀内先生は、それは教育に期待したいといいます。

自分の子供の小学校のお受験で求められるのは、昔の典型的な上層サラリーマン家庭の姿だそうです。その様なステレオタイプの考えを変えていかなければいけないといいます。

宮台先生は、その様なステレオタイプの考えは、外面的な基準がはっきりしているだけまだましだといいます。
大学では、200人のクラスで前の3人だけを相手に授業をしている。「アングラ」「カウンターカルチャー」など基礎的なことから教えないといけない。すると、最も優れた人間が不満を持ってしまう。
偏差値の高い大学に入ったはずの子らが、ポップカルチャーについて◯◯とXXどっちがよいかと授業でいうと、うなずくのは数十人に一人だけの状態だといいます。かといって自分自身の尺度があるのかといえば、ない。

語学などは、ちょっと努力すれば身に付くが、映画、詩、相手がいい女かどうかは学習的努力によっては身に付かない。
教えても、多くの男は諦めてしまう。女の方がましであったが、最近は少しやばいらしいです。

堀内先生。センスを身につけるのは、包括的、家庭環境などもあるといいます。
外部基準でステレオタイプを押し付けられていたら難しいかも。

宮台先生は、それは二子玉西部楽天社員問題だといいます。IT産業に勤めているニューリッチ層の問題だといいます。彼らは安倍晋三信者が多い。安倍さんにまとわっているネオリベ的臭いが好きだといいます。流動性の中で、数年後に自分がどうなっているかの想像力が欠如している。

堀内先生は、テンプレートの言葉でしゃべる人が多いと嘆きます。

宮台先生は、自分の経験でしゃべる人と、本を参考にしてしゃべる人とは見ていて分るといいます。

堀内先生は、理性は信頼しないが、反省的に感情の動員をするしかないといいます。

宮台先生は、旧約聖書にある通り、多くの民族が殺し殺されてきた。大事なのは、それがなぜなのかを記録することだということです。

堀内先生。最後に「NO」という映画が参考になると仰っていました。チリのピノチェト政権を倒す広告マンのお話ですが、教訓が2つあるといいます。
一つは、本当のことをいっては人は動員されないということ。
もう一つは、人々はこんな簡単ことでも動員されてしまうということです。
動員は、運用によってよくも悪くもなる。

結論として、今日の講義は、人々が感情的に劣化した時代にどう生きるか。人々を動員することの必要性と危険性があるのだと思いました。

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