2010年8月12日木曜日

ポニョ


宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」をDVDで見ました。

とにかく、この映画の世界観が今までの宮崎作品と違っていて、それをどうとらえるかということに悩みます。

海の中の画は驚くほど幼稚な画で描かれています。これは、監督の一つの実験だとして評価したいと思います。

それから、主人公のこどもと母親のシーンは、今までの宮崎作品と同じように描かれていて、さすがに芸が細かいと思いました。

主人公のこどもと半魚人の女の子のシーンは画としてはきれいに描かれていますが、内容は非現実的です。

また、半魚人ポニョの父なる奇怪な人物は、この不思議な物語のなぞを解くことが期待されましたが、最後までなぞは説明されませんでした。

この映画の不思議なところは、この物語がよい話として描かれているのか、悪い話として描かれているのか、どのような意図で描かれているのかがわからないというところです。

おそらく、監督もそれは悩みながら創ったのだと思います。

結局、結論で主人公と女の半魚人がキスをすることで「世界のほころび」がふさがれた、というのはあまりにも安直な終わりかたであると思いました。

物語自体にはそれほど複雑さのない「となりのトトロ」の終わりの方がずっと感動的です。

ただ、作り手からの立場からいえば、今までのジブリ作品とは違ったものを創ろうという野心はあったと思います。
ですから、「トトロ」のさつきよりさらに年少の5歳児の目から見た世界をていねいに描こうというつもりだったのでしょう。
それは、ある程度うまくいったと思いますが、主人公の感情があまりに平板に描かれていて、感情移入しにくかったという風にも感じました。

しかし、繰り返しますが、これは一つの実験として意図的に今までのジブリ作品とは違ったものを作ろうとしたものです。それは、評価すべきだと思います。
ただし、その実験はあまり成功したとはいえないでしょう。

しかし、断片的に面白かったり感動的なシーンはありました。

そのなかで、この物語かが訴えたかったのは、こどもの純真さが魚にも伝わって女の子になるという、非常に純粋で理想的な世界ではないでしょうか。このよごれた世界であえて「純真」を描くということに挑戦したのだと思います。だから、実験作でもその心意気には共感する部分はあります。

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