大塚英志著『少女民俗学 世紀末の神話をつむぐ[巫女の末裔]』を読みました。
日本における「少女」がいかに興ったかを、民俗学の知見から分析したバブル時代に書かれた本です。
岡田有希子の自殺やおニャン子など、題材として古い面もありますが「少女現象」を民俗学とサブカルチャーによって説明するところはなるほどと思わせるものがあります。
ここで思い出されるのが、社会学者、宮台真司氏によって社会システム理論に基づき厳密に分析された『制服少女たちの選択』でしょう。
この本では、まずコミュニケーションのスキルに従って接するメディアが違うこと、そしてブルセラを売る女子高生に罪の意識はなく、大人の説教は無効だと宣言していることが主張されます。
『少女民俗学』では、やや楽観的に「少女」について分析してあって『制服少女〜』のような厳密さはないけれども、1970年代前半にかわいいカルチャーが勃興してきたことは宮台氏の『サブカルチャー神話解体』などとも一致するところも多くあります。
しかし、はっきりと対立する面は、宮台氏が「説教は無功」と断言したことに対して、大塚氏は「付」で反対しているところです。
この本自体は、当時のサブカルチャーを扱った気楽に書かれた本であって著者もそのようにいっているのですが、後に書かれた「付 その後の<少女民俗学>」では、少女たちの暴走を目にして、かなり深刻ないい方になってきているところは興味を引きます。
宮台、大塚論争は結果的に宮台氏がのちに、大塚氏のいっていることの方が正しかったと全面的に認めて幕をおろします。
しかし、面白いことにその前には大塚氏は宮台氏の言説に触れて「少女たちの内面は本当になくなってきたのかもしれないと思うようになった」といっていたことです。
民俗学といういわば内面から攻めるやり方と、社会システム理論という客観的に攻めるやり方と両方をにらんで、少女に対するより深い理解が得られるのではないでしょうか。
僕はこの本を読んで、「少女」や「かわいい」がどういう経路で発達してきたかをしり納得させられることが多かったです。
2012年7月25日水曜日
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