2013年7月25日木曜日

「風立ちぬ」

宮崎駿監督、アニメ映画「風立ちぬ」を吉祥寺オデヲンで朝一番で見てきました。

平日の朝一番でしたが満員でした。

堀辰雄の小説『風立ちぬ』は読んでいませんが、僕の世代だと松田聖子の「風立ちぬ」という曲(詞・松本隆)の印象があります。

とにかくハイソで素敵で切ない軽井沢のイメージ。
風のイメージ。

最初の方では、随分おとなしく物語が進んでいって、奇麗だけどつまらない作品かなという印象を持ちました。が、違いました。

細かく美しく作り込まれた画面の中で、まるで自分もその世界に入っていってしまった様な感覚に酔いしれられます。

戦前の東京の下宿、蒸気船の中の夕日、光までも細かく描かれていてタイムスリップしてまさに昔のその場所にいったかのような感覚になりました。

物語も重厚でよくできています。

ただ主人公と婚約者との恋のかけひきが、もう少し工夫すれば面白くもなるかな、ちょっとストレートすぎるかなとは思いましたが、これはこれで感動的ですのでいいでしょう。

全体的に古い文学作品を見ている様な丁寧な作りで、宮崎作品のファンタジーやアクションは抑えられているので、それを期待していた子どもなどには物足りない感じがあるかもしれません。
しかし、見れば子どもでも感動すると思います。

全体を通して、美しく、ピュアでクリーンなイメージ。
この清楚さに対して、映画はもっと汚いものも描くべきだという批判もあるかもしれませんが、僕はこの作品にはこの作品のよさがあるので、この清楚さは大事にしていっていいと思います。

キスシーンや菜穂子が布団に誘うシーンなどは、ジブリのピュアさに反するかとの思いも一瞬よぎりましたが、きわめて自然で、全く不潔な感じはしなかったです。

あんまり文学的すぎて、子どもがあんな丁寧な言葉を使うか、とか不自然な点もなくはないのですが、全体としてはそんなにおかしな感じはしませんでした。

ストーリーどうこうよりも、とにかくこの美しく切なく、風に吹かれたような世界を体験できたことが幸せでした。

菜穂子の最後の行動の意味がわかったところは感動的でした。

僕は、映画が始まったところから涙ぐみそうになっていました。

この世知辛い世の中で、これだけピュアな作品を作って、それを多くの人が見て感動しているという事実に感動してしまう。

最後は涙を抑えながら見ていました。

ところで、決してうまいとはいえない二郎役の庵野秀明さん。人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の監督ですが、なぜ、庵野さんなのか。
おそらく、この作品は宮崎監督の思い入れが強い作品だと思います。
主人公は本当にピュアな人を選びたかったのではないでしょうか。

以下、Wikipedia「庵野秀明」より、

宮崎駿とは対立した時期もあり、庵野が宮崎監督作品を「つまらない映画」と評し、宮崎も『新世紀エヴァンゲリオン』を「いらないアニメ」と酷評することもあった。しかし宮崎は『新世紀エヴァンゲリオン』放送終了後、心配して庵野に電話をかけ、「とりあえず休め。半年休んでもなんてことはないから」と庵野を気遣った。庵野本人もこの言葉にかなり助けられたという。

こういう言い方がいいのか分りませんが、宮崎監督の「愛」を感じます。

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