大塚英志著『アトムの命題 手塚治虫と戦後まんがの主題』を読みました。
ディズニー的な「非リアリズム」的な表現で、死にゆく身体を描いたのが手塚治虫で、それが戦後まんがの原点だといいます。
手塚は戦中、習作『勝利の日まで』で、ディズニー的なキャラクターを描いていましたが、戦争の体験を経てそのキャラクターを流血させます。
今までの、まんがの約束事では登場人物はどんな痛い目にあっても次のコマでは治っています。
ところが、手塚治虫はディズニーのような「非リアリズム」の身体に傷つき、死にゆく身体を描きました。これが、画期的なことだといいます。
さらに、日本のまんがが絵巻物や漢字仮名交じり文の影響でできたのではなく、戦前のロシアのエイゼンシュタインや構成主義からの影響を受けてできたものではないかという議論を展開します。
また、「アトム」が『アトム大使』として初登場するのが、ちょうど講和条約締結期に重なることから、「アトム」と「戦後」との関係は切っても切れないものだといいます。
マッカーサーが日本人を12歳の少年だといったこと、アトムがロボットであるが故に成長できないことが戦後日本の問題として語られます。
「エヴァンゲリオン」まで続く、この国の「大人になれなさ」の問題は、アトムにまで紀元を遡れるのかと思いました。
今までの、単純な「『新宝島』が映画的手法を取り入れた最初の作品」だという神話を解体する、精緻な議論が展開されます。
仮説の域をでないものもありますが、戦後まんがの原点を学ぶことができました。
2013年2月11日月曜日
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