2010年10月29日金曜日

低成長

今日は、朝日カルチャーセンター新宿校で経済学者の飯田泰之さんと哲学者の萱野稔人さんの講座「低成長社会の経済「学」」を受けてきました。

飯田先生はマクロ経済学の計量モデルを作ったりしていて、萱野先生はフーコーやスピノザを研究されていた方です。

まず飯田先生は「低成長」というと一般の人には「0成長」だと思われるので、できるだけそのことばは使わないようにしているそうです。

われわれ素人はいろいろな勘違いをしている。例えば、日本の輸出依存度は低いのに、高いと思っている。
需給ギャップがあるが、それは社会的需要がないというのも間違え。
GDPとは別に幸福度を計るべきだといっても、その数値はGDPにほぼ比例する。

日本人がお金を使わないのは、将来への不安。お金だけではなくてシステムへの不安。非常に不安的なシステムである。

経済成長を量として考えるのも古い。今は商品の質で付加価値をつけることが重要。
大きな成長は期待できないが2~2.5%ぐらいが適当。

ワークシェアリングは、仕事を分けることが難しい、できたら海外にもっていかれるので難しい。

需給バランスをとるには、財政、金融、為替、がある。
財政出動をすると円高になり輸出業にマイナス。
金融政策でするしかない。
為替とは、円とドルの交換比率。アメリカがどんどんドルを出しているので円高になる。日銀はせめてアメリカ並みに円を出すべき。そうすれば、戻らないまでも今より円高は進まない。

一個の商品はドルの値段が変わらないかぎり、円高でも売れ行きに違いはない。ただ円にもどす時に損をする。

金融政策はあくまで対処療法。でも対処療法もしなければならない。

本当によくするには、色々なことを同時にやらなければならない。

日本は税率が高いわりに、税収が低い。
ルールが明確でないことが大きい。官僚の裁量権が大きすぎる。ルールの明確化が必要。

派遣について、日本はホワイトカラーの流動性が低いのにブルーカラーの流動性が高いのが問題。

社会保障について。日本の社会保障は、格差をさらに広げることになってしまっている。
ベーシックインカムは理念としてはいいが実行不可能。
子供には子供手当。高齢者には一階部分の定額年金。
真ん中の世代には給付付き税控除がいいのではないか。

提言としては、
短期には、金融緩和、円安。
長期には、規制の明確化。
安心社会にするには、所得再配分システムを普通の国と同じにする。

ということでした。

この講座を聴いて、印象に残ったものは、答えは意外とつまらないけど色々な政策を同時にやるしかないという言葉でした。
往々にして、マスメディアや政治家は極端なことを言って、すぐにでもうまく変えられると主張しがちですが、実際はセットでやらなければならない。
われわれ国民も極端な政策で全てが一挙に解決することを期待しがちですが、財政破綻した国のパターンは財政再建と大盤振る舞いをくり返す悪循環におちいっていくということでした。

経済を立て直すには、落ち着いた眼で見た冷静な判断が求められていると思いました。

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