2015年8月18日火曜日

『カウンセリングの実際問題』河合隼雄

『カウンセリングの実際問題』河合隼雄、を読みました。

カウンセリングにの基本的な考え方、実例、原則、等が書かれた本です。
『カウンセリング入門』が素人に向けて書かれた本だとしたら、本書は専門家が読むに耐えうる、いやむしろ専門家になりたいなら是非とも読んでほしい本です。

はじめは、ロジャーズについて書かれてあるというので、ユング心理学者によってどう書かれているかという興味から読みましたが、内容はそれどころではない深い内容になっていました。

原則について書かれてあるのでカウンセラーがどう振る舞うべきかが書かれてあるのかと思いました。しかし、著者は原則を次々に述べるのですが、必ず留保をつけます。

カウンセラーはクライアントの家を訪ねていいのか、電話をしていいのか、転移はいいことかなど、答えていくのですが、必ずそのときによっては原則に反することがいい場合もあることを強調します。そのときに望ましいと本当に感じたなら、そっちに従えといいます。

僕は、カウンセラーなるもの「必ず」こうしなければならない、あるいは「絶対」してはならない、という原則があるのかと思って、それを知ることができると思っていました。
しかし、「必ず」ということはないと著者はいいます。

これは、「必ず」こうしなければならないということが、教条主義に陥ってしまって、本物の気持ちがこもらない対応になることを戒めているのだと思います。

だからといって理論や知識を疎かにしていい訳ではありません。理論や知識を学習することは極めて重要で、それをふまえた上でのはなしです。しかし、その理論が、つい理論に頼って自分の言葉で話さなくなってしまうことを著者は警告しているのでしょう。

気持ちがこもるといいましたが、実際のカウンセリングはそんなに「温かい」ものではありません。深くて親しくない関係が理想だといいます。もちろんこれも例外はありますが。

ロジャーズの理論についても、表面的な理解で誤解している人が多いといいます。これも常にそのとき次第だといいます。

僕はカウンセラーではありませんが、人と接するときに心理学的にいってどれか正しい答えがあるのかと思っていました。しかし、この本で常に例外があると知り考え方が変わって、ものの見方が広くなったようです。

また、場合によってはどんなに努力してもどうしようもないことがある。そのときの自分には、それしかできなかったことがある、ともいいます。これも感銘を受けました。

カウンセリングはただ心理的問題を解決するものではありません。そういう軽いものもあるでしょう。それはそれでよいのですが、ときにはもっと重い問題を背負って、どうしても自己変革をしなければならないときがあるといいます。しかし、それは新たな可能性への飛躍でもあるのです。それをユングは「自己実現」といいました。自己実現とは、そんななまやさしいものではありません。それには大変な苦しみがともなうといいます。

自分自身の苦しみの意味についても考えてしまいました。

また、時が熟するのを待つことの重要さも書かれています。この辺は同じユング派でも、フォン・フランツ女史と比べてより穏やかだと思いました。原則を重視するドイツ人と、優しさを大事にする日本人の違いでしょう。

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