2009年12月2日水曜日

レヴィ=ストロース


前回と今回の「芸術人類学」は、ちょうど授業で扱ったレヴィ・ストロースが先日100歳で亡くなったので、レヴィ・ストトースのお話だった。

クロード・レヴィ・ストロースは、今まで実証科学だった「人類学」を「思想」にまで高めた人だ。その思想は、いわゆるポストモダン(近代以降を考える思想)の口火をきったといってもいいほど大きな影響を思想界に与えた。

以下授業(2009年11月22日)

レヴィ・ストロースは、お父さんが印象派の画家でベルギーの印象派やシュールリアリズムとの交流があった。

レヴィというのはユダヤ人の名前で聖書の「申命記」や「レヴィ記」に出てくる。
モーセがユダヤ教の儀礼を作った。そのときレヴィ一族は神官だった。

ユダヤ人はその後東ヨーロッパに移動して黒海のほとりの人々がユダヤ教に改宗。
黒海、ウクライナは中世ヨーロッパの中心地となる。

ユダヤ人、南イエメン系の人たちはカッコイイ。
ヨーロッパ系の人々、今のユダヤ人顔。

ユダヤ人はポーランドに移住。中世はロシア人に抑圧された。
西ヨーロッパにも移住した。

勤勉、頭がいい。タルムード(数の神秘学)を学ぶからだという説もある。

ユダヤ人は土地がなかった。アイデンティティは「ヘブライ語」と「ユダヤ教」

スペインのマルセーユあたりは、中世にはユダや神秘主義が興った。

ユダヤ人にとって大事なものは、持って逃げられもの。「知識」=「聖書」、「お金」

ユダヤ人はヨーロッパに散っていったが、各地で隔離された。シナゴーグ(ユダヤ教の教会)を中心として悪い環境に置かれた。

一方、「金融」と「知識」の代表。

知識人、カント、フッサール・・・音楽家、メンデルスゾーン・・・

20世紀弾圧でアメリカに逃れたユダヤ人オペレッタ歌手がミュージカルを創った。
「屋根の上のヴァイオリン引き」

一方ロシアボルシェビキ共産党の98%がユダヤ人。ロシア革命もユダヤ人と深くかかわっている。レーニンは1/8ユダヤ人。

その中でレヴィ一族は司祭。
アメリカに渡ったレヴィ一族が、当時船の帆を青く染めて新しいズボンを創った=リーバイス

ある時アメリカのレストランで順番待ちをしていたレヴィ・ストロースが「Lévi-Strauss」と書いたら「Book or Jeans?」ときかれウェイトレスの頭の良さに感激したそうだ。

レヴィ・ストロース家はベルギー
クロードは法学部に入る。社会学。デュルケーム「集合意識」や「自殺研究」をしていた。
その甥のマルセル・モースがソルボンヌ大学にいた。「未開社会における分類」「贈与論」
フランスではエリート養成機関が他にあるので、ソルボンヌでも普通の人がいくという感覚。
第一次大戦で学生半分死んだ。上の世代いない。
大学教授資格試験を哲学で受ける。同級生、シモーヌ・ボーボワール、メルロポンティなど

教授試験に通ると、田舎の高校の教師をして大学の教授になるのが出世パターンだったが、哲学に疑いを持ちはじめる。
ローニー(アメリカ)の「プリミティブカルチャー」を読んで感銘を受ける。=
「西洋文化だけが文化ではない」
ブラジル、サンパウロ大学の社会学教授になる。2日、馬で奥へいくとアマゾンの未開社会があった。週末アマゾンで過ごす。未開人から学ぶ。3年間。
ヨーロッパに帰っても、ベルギー時代社会主義運動していたので職がない。
ナチスの台頭でフランスのユダヤ人、脱出。レヴィ・ストロースはアメリカ行きの小さな船で脱出。アンドレ・ブルトンも同乗していた。
ニューヨークでは、ユダヤ人たちが学校を作った。アルフレッド・シュッツ、ニュースクールオブソーシャルサイエンス。
レヴィ・ストロースは教授だったが貧乏。スミソニアン博物館に通った。
そこで、ロシア系ユダヤ
人の言語学者ヤーコブソンに出会う。
ロシア言語学、プラハ、モスクワ、サンクトペトロブルグ

現代言語学F.ソシュールから。天才。10代でヨーロッパ後とインド語の共通性を発見。
「構造言語学」を創る。その影響で新しい言語学ができる。
レヴィ・ストロースはヤーコブソンから構造言語学を学ぶ。
そこから「親族の基本構造」を書く。構造言語学を人類学に適用。
戦後フランスへ戻る。人類学博物館の副館長。
1955「構造人類学」を上梓。

授業(2009年12月1日)

レヴィ・ストロースの中で重要な人=ジャン・ジャック・ルソー
ルソー=フランス革命の理論的基礎を作った人だが複雑な人格。「告白」「エミール」
人間の根源的「悪」を犯してきたと考えた。
日本文学にも影響。太宰治も読んでいたのでは?

ある意味、矛盾を抱えた人。フランスを追放=ジュネーブへ(元々スイス人)

レヴィ・ストロースの講演「人類学の創始者ルソー」
もともと人間は自然の一部と考えられてきた。生と死のサイクル。人間の生きることは矛盾を孕んだもの。自然の中で変化しないものはなにもない。しかし、近代では人間と自然とを分けてしまった。
昔は、例えば日本では「無常」ということが重要視された。近代人(それ以前の西洋人も)は、自然と人間を分けた。人間=不死という考え、エジプトのミイラ、ピラミッド、昔偉い人は水銀を服用した、死後の腐敗を抑えるため(丹薬)。

ヨーロッパ人は未開人を動物扱いした。ヒューマニズムの名のもとで。アジアもポルトガルとスペインの植民地にされたが、日本は鎖国とキリシタン弾圧で奇跡的に逃れられた。
人間が自然より偉いという考え方は第二次大戦まで続いた。戦後、理性的なはずの人間のしてきた残虐性を見て反省したが、昔から反対していたのはルソーだけ。
オランウータン(マレー語で「森の人」)を(過ちかもしれないが)人間かもしれないと言った。
ルソー「同胞が苦しむのを見ることに対する生来の嫌悪(ピティエ)」が「法」「風俗」「徳」に先立つ社会の根本と考えた。ルソーの場合「同胞」の範囲が広い。これは、東洋思想と共通する考え。
仏教では「有情(うじょう)」といって、動物や植物も感情を持つと考えられてきた。犬、猫はもちろん、魚も飼い主に反応する。ゾウリムシさえも暖かいところに置くとリラックスする。
あらゆる有情は苦悩を抱えた存在である。そこに憐れみの能力が必要とされる。

言語学では、文法があって言葉ができたと考えられていた時ルソーは人間最初の言語は「音楽」だと考えた。音楽は「感情」と「秩序」の結合。ルソー作曲の歌で有名なのは「むすんでひらいて」
レヴィ・ストロースはさらに「詩」と「神話」を重視した。
レヴィ・ストロースは70歳ぐらいから「絶望的」になる。自分の望まない社会になってきている。
仏教では人間=生き物=生きかつ苦悩する存在

先進国、アフリカ、アジアから資源を収奪してきた。日本もそのルールに乗ってしまった。そのルールの上では戦争もある程度の合理性はあるが、そのルールがいいのかが問題。終戦後はアメリカの属国になってしまったのであまり真剣に考えてこなかった。

今、権力の図式(スキーム)が変わってきている。中国はかつての日本と同じ道を歩んでいる。その先が大事。もう一度「坂の上の雲」ではなく、スキーム自体をひっくり返さないといけない。

次世代の産業はナノテクノロジーが重要になるがそれには、レアメタルが必要。それはアフリカでしか採れない。アメリカ、ヨーロッパ、日本は(お金は出しているが)上からの目線で見てきたからダメ。中国だけが1950頃〜一貫してアフリカ人と同じ目線で援助してきた。武器供与。しかし、労働者を働かせてレアメタルは持っていってしまうだろう。

日本は違う道を考えなきゃいけない。

レヴィ・ストロースはルソーの「孤独な散歩者の夢想」の中で、ルソーが犬にぶつかって失神したときの体験を書いてある所をあげて、「全てとの同化」「根源的同化」としてわれわれの目指すべき道だと考えた。

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