2009年10月19日月曜日

あの娘

好きだ。好きだ。好きだ。
衝動的な感情だ。
いきなり僕を襲ってきた。
きれいな二重の目。
鼻筋のまっすぐとおった小さな鼻。
笑うと、白いきれいな歯がならんでいるのが見える。
きれいな皿のような、潤った唇。
表情が緩むと笑い皺ができる。
少しクールに、はにかみながら周りの女の子とおしゃべりしてる。

頭もいい。
友達と話をしていても、当意即妙、その場にふさわしい言葉をさりげなく吐く。
ガリ勉ってわけじゃないが、テストの成績も、いつも上位に列ぶ。
でも、人を見下したような、生意気な態度は一切見せず、いつも一歩下がって自分を出すのを控えている。

意外にシャイなのだが、それを人にさとられまいと、一生懸命ともだちの会話に加わる。本当は少しレベルが低いと思っていても、そんなしぐさは一切見せない。

男の子としゃべる時は、すごく緊張していてすぐに会話に詰まってしまう。そんな、追い詰められた表情もたまらなく、かわいい。

背が低いのがコンプレックスだと言っていたが、水泳の授業で見る限り、ムネもそれなりあって、太りすぎず痩せすぎず、ぼくにとってはちょうどいいボディラインだ。

彼女の手に触れたい。
抱きしめたい。

彼女が僕に惚れて、なんか困ったことがあったとき、やさしく抱きしめてあげる。
こんなことができたら・・・。

ぼくの気持ちは、
I like you.
から
I love you.
に、そして
I want you.
に変わってきた。

休み時間。彼女が友達とおしゃべりしている。
ななめ後ろから見ると、制服のブラウスの下のブラジャーがハッキリ見える。
ぼくのあたまの中の脳内物質がいっきに分泌される。
この幸福感はドラッグどころではない。


数ヶ月前までは、他の娘が好きだった。
そっちはもっと外交的で明るくてボーイッシュで男の話題にも平気で入ってこられる娘だった。

その時は、彼女の方は、ああ結構美人だな、という程度だった。

それが何の理由か、彼女の虜になってしまった。
なぜだろう?
自分でも思いだせない。
ある日突然、彼女の仕草が、僕の胸を突き刺した。

彼女の一言一言を聞き漏らさず、頭にいれようと思った。
その言葉を、自分なりに解釈する。
ぼくのこと、すこしは気になるのかな、とか。
そしてまた、妄想はひろがる。

彼女は傷ついていて、それを癒してあげられるのはぼくだけ。
彼女がずっと下を向いて、涙が一たれ落ちたら、ぼくはそっと近づいて彼女の肩を抱く。
ぼくの胸に顔をうずめる彼女。
一度離れ、二人は顔を向かい合わせ、お互いの目を見つめあう。
もう言葉なんかいらない。
彼女は目を閉じ、ぼくは唇をそっと、彼女の唇に重ねる。
そして、お互いに情熱的に激しく抱きしめあう。

と、僕の夢を覚ますように母親がさけんだ。
「ごはんできたわよ」
くそ!せかっかく、ここまで妄想ができたのに!


学校では、彼女としゃべることはほとんどない。
彼女はシャイで女の子としかしゃべらない。
ぼくも気が弱く、女の子としゃべると緊張してしまう。
彼女にも好きだということをさとられないように振る舞っている。
こんな二人だから、結ばれることはありえない。
そうするとまた、ぼくの空想は動き始める。
want you
に変わってから、ぼくの妄想もセクシャルなものになっていった。

彼女とキスをして、抱きしめて二人でベッドに倒れ込む。
彼女はきれいな二重で、じっとぼくを見つめながら、身動きもせず、ぼくのなすがままに身を任せる。
ぼくは、彼女のブラウスのボタンを一つ一つ開けていく。
彼女も、じっとぼくを見続けているが、だんだん涙ぐんでくる。
と、ここでまたチャイムか。
授業が始まるので、今日の妄想もここまでか。

水泳の時間は拷問だ。
彼女の水着姿が見られる。
至福の境地だが、同時に下半身がいうことをきかない。
この姿をだれかに見られたら、自殺したいぐらいだ。
だから、彼女を見ることは絶対にできない。
でもl、妄想だけでも人間の身体は反応する。
何としても、この肉体の変化を抑えなければならない。
最も性欲から遠い、嫌いな先生の顔や声をむりやり思いだしなんとか、暴れん坊をおさめようとするが、中々思った通りにはいかない。
なんとなく手で隠しながら壁の方に身体を向けながら、更衣室までいったが、気づいている奴もいるかもしれない。
泣きたくなるけど、しょうがない。

つぎの時間はそうとう落ち込んだ気持ちで授業を受けた。

2月。
嫌な季節がやってきた。
なんで、好きなことを告白するのがチョコレートなのか?
外国では、いろんなものをプレゼントするらしい。
男女を問うこともないらしい。

もらってる奴を、羨ましいとかは思わないけど、もらえない多数者はどう振る舞えばいいわけ?
おめでとうというのか?くやしがるべきか?
くやしいと思うことが、くやしい。

去年はモテる奴はイニシャル入りのオーダーメードのものをもらっていた。
ぼくのめずらしいイニシャル「Y.Y.」を作る娘はいるのか?
考えたくもない。
もう恋愛なんていいよ。
妄想の世界で暮らそう。




今日、ひとみちゃんとあさみちゃんとあべさんたちと、好きな人をお互いに告白しあう遊びをした。
みんな、チョー緊張しながらも、なんか嬉しそうだったけど。やっぱ言うのにはすっごい勇気がいる。
先ず、どんなタイプが好きという話になって、わたしは「やさしいひと」って言ったら、みんなも「それは大事だよねー」といってくれた。
でも、やさしい男はたくさんいるよね。どんな優しさってきかれた。
ちょっと考えて、「例えば、なんか洋服とかを汚してしまったら、何にも言わずさりげなくハンカチをかしてくれるとか」っていったら、「それいいー!」みんな大はしゃぎになった。
そうやって、みんな一通りすきなタイプをいったら、次にはチョコレート贈る?ってはなしになった。本命か義理かわからないように贈るって娘と、贈るって娘がいたけど、わたしは贈らないっていった。
だって、その人の事好きな人結構いるから、私が贈ってその娘たちと変な関係になるのもいやだし。その人そういうの軽く考えてる感じがして、ちゃんとホワイトデーとかお返ししてくれなさそうだし。
わたしは、心の中でその人のことを思っているだけで満足なのっていったら、みんなに「うそつきー」と責められた。
でも、本当にわたしは自分が好きなだけでいいと思っている。ときどき、しゃべりかけらるだけで満足なの。
最後に、名前をいうかどうかもめた。わたしは絶対いえないって言ったけど、そういうとみんな「ずるいー」という。結局、それぞれ紙にイニシャルだけを書いて、混ぜてから見せあうことになった。少し勇気がいるけどこれなら、誰が書いたか分からないからいいかと思った。
わたしは小さな紙切れにハッキリと「Y.Y.」と書いた。

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